潜水日記

思考の記録です。

掏摸

乗り換えのために歩いていると、私と人との間を抜けていく影があって、次の瞬間には一歩前に行かれた。やや強引とも思える抜き方をされて驚いたけれど、次の瞬間どうでも良くなった。その男性が背負っている吉田カバンが目に止まった。私は鞄が好きなのだ。

リュックの前ポケット。キャメル・シガー・メンソール・ライト・ボックス、だと思う(何故それがわかるのかというと、空箱が私の家にあるからだ。私は煙草の空き箱を集め始めた)。2つ、ジャストサイズで収まっている、見事に。

唐突にその均衡を壊してみたくなった。

2つあるなら、そのうちの1つを奪ってみたい。

掏るか?

私より歩幅が大きく、足を前に運ぶスピードも早いその相手に追いつくのは至難の技だろう。何より人目につきすぎる。通勤ラッシュ。同じ方向に向かって歩く屍の群れ(私含む)。気づかれる可能性はないとは言い切れなかった。いくら他の人が何も見ていなかったとしても、本当かどうか私には知る由もない。

 

諦めた。手先が器用だったらな、と思った。