潜水日記

思考の記録です。

横断歩道、ウーバーイーツ、邂逅

 幅にして3mの横断歩道。やってこない自動車。わずかな時間であっても待てずに赤信号にも関わらず渡る歩行者。

 横断歩道の手前で立ち止まり、何人もの人に追い抜かされ、何人もの人とすれ違い、ぼんやりと私は考えている。赤信号分の空白を埋めるために。

 

dorian91.hatenadiary.jp

 

 別に赤信号で渡る人々に恨みがあるわけではなくて、これは私の問題だと思うのだ。単純に「私」が「渡れない」ってだけであって、どうか気にしないでもらいたい。本当に車も人も往来がまるでない深夜なら、私も赤信号で道を堂々と渡るだろう(駄目だけど)。でも今渡らないのは、それなりに理由があるのだ。

 自分が仮に自動車なるものを運転する側だとして、その拠りどころはみんなが守るであろう道路交通法だけだと思う。嵐で荒れ狂う海に漂流する一枚の板さながらに、私にとって「○○はこうであるだろう」という推定は命綱なのだ。赤信号では誰も道路を渡らないだろう。車は道路の左側を運転するだろう。右折より左折が優先で、道を曲がるときはウィンカーを出して合図を出してくれるだろう、云々。その予測に反する咄嗟の行動に、自分が適切に対処できる自信がまるでない。だから車を運転しないし、あまり運転したいと思わない。

 自分が誰かを車で轢く未来がイメージできてしまうので、歩行者であるときはその「私」に殺されないよう法を遵守することに越したことはない。赤信号で渡れないのはそういう理由からです。車に轢かれるのはそれはそれで嫌ですが、自分が人を轢くのも轢かせるのもつらいことと思います。

 そんなことをパッと考えていてもなお赤信号は青には変わらなくて、なんというか、別にいいですけど、赤信号を待っているほうが滑稽に思えてくるこの現象に名前をつけるとすれば一体何なのだろうねと別のことを考え始めたところで、道を挟んで反対側から自転車がコキコキとやってくるのが見えた。

 どうやらウーバーイーツの配達員さんのようで(あのボックス型のリュックで一発でわかります)驚いたことに律義に横断歩道の手前で止まった。おおお。同志よ。へへへ。止まるんだ~~~。へへ。にこにこ

 多分ウーバーイーツ的には、配達員さんの規約だかマニュアルだかに明記されているのだろう。「道路交通法は絶対守りましょう」「違反した場合は、云々」

 お互い守らなければならないものは別かもしれないが、結果的に同じように青信号を待つ私たち、その弱い連帯(私からの一方的な)。

 特に目を交わすことなく横断歩道の真ん中で私たちはすれ違い、それぞれの方向へ進む。かくいう私も一秒後にはウーバーイーツさんのことは頭から追いやってしまったけど、このことは日記に書こうと強く思った。