ベランダの実験室

思考の記録です。

鋏で断つ

時が経ち、久しぶりに友人と再会する。私は会うたびに自分が鋏を手にしている感覚に襲われる。断ち切るのはもちろん相手と私を繋ぐ糸だ。

多分これは私の一方的な感覚だと思う。仲違いをしたわけではない。普通に過去を懐かしみ、近況を報告し、未来へのささやかな展望を語るだけ。なのに、私は糸が一本、また一本と切れていく気がしてならないのだ。切っていくのは、私の方。

その鋏は、私が自分で用意したものなのか。そうだろう。だって私が持っているのだから。

久々に彼女と会った。ファミレスで食事をした。何かの打ち合わせなのか、お爺さんが大声で喋っていてドキドキした。怒ってるわけじゃないだろうに、その人が喋る度に私はドキドキした。アップルパイを頼んだ。温かいアップルパイの上にはアイスクリームが載っていて、ほろほろとバニラアイスが溶けて、アップルパイをさらに絡めて食べた。彼女は、よく喋った。私はよく聞いた。私の話は何もしないまま、終電近い電車で私は帰る。

それが私の見ている風景。

私は、話を聞いて欲しかったのだろうか。わからない。私の話をよく聞いてくれた人のことを思い出す。あの人も同じ気持ちだったのだろうか。だとしたら、とても申し訳ない。


こうして、私はちょっとしたモヤモヤを抱えるたびに糸を断ち切っていく。どうしよう。私は独りになってしまう、と思いながらそれをやめられない。


私は、友人と呼べる存在が少ない。

誰かと出会うたびに、そんなことを考える。